指導者用コンテンツ

 

 

この教材は、古くからある歴史の「道」を題材として、地域の歴史や文化への興味・関心を育成するものです。小学校高学年生から大人までの幅広い年齢層を対象としています。
 
「道」は、土地の歴史と強く結びていています。地域の文化や産業や生活にも関わりを持ち、歴史の基底を形作るのが「道」です。

 

フィールドワークの手順

この教材では、フィールドワークを通じて、「道」が古代から今に至るまで、現代を生きる人々の生活や営みにつながる基盤であることを、歴史的、文化的、地理的な観点から学びます。
 
フィールドワークを安全かつ適切に実施するために次のような手順で進めます。
全体は、準備と実施というふたつのパートに分かれます。

1.資料調査

最初に、地域の道と周辺の史跡や遺跡の分布調査を行います。
資料調査の目的は、フィールドワークの対象となる史跡や寺社、石造遺物の存在を事前に検討し、「道」との関連を知ることです。
 
フィールドワークの参加者が決まっている場合は、参加者全員で一緒に調査を行います。調査を行う場所については参加者に検討させますが、ヒントを提供できるようにあらかじめ準備をしておきます。

図書館での調査

図書館の郷土史コーナーには、自治体の歴史やその土地にゆかりのある人物に関する図書や資料が集められています。
 

 
自治体史は、地域に詳しい研究者が書いたもので、その地域での出来事や人物について、時代の古い順に書かれています。史料編には地域の古文書や遺跡、遺構、仏像、石塔などが掲載されているので、「道」を探す参考になります。
 
図書館の司書に相談すると、書庫に保管されている資料などの検索を手伝ってもらえます。持ち出し禁止の資料もあるので、調べることを事前に絞り込んでおくことも大切です。

歴史博物館・郷土資料館での調査

歴史博物館や郷土資料館では、地域にかかわる文化財の保存・研究・展示などをおこないます。
これらの作業にたずさわっているのが、専門職員である学芸員です。
 

研究成果やニュースなどをまとめた研究誌やパンフレットを発行している博物館も多くあり、市民向けに作られたこれらの資料は地域の歴史や文化を知り「道」を探すための参考になります。
 
館内に「道」に関連した展示品や解説があるかどうかを学芸員に確認します。他の地域とのつながりを示す「道」の証拠が、館内にあるかも知れません。
 

 
歴史の「道」について博物館・郷土資料館の学芸員に相談すると、保管資料を含めて情報検索を手伝ってくれるでしょう。
 

お年寄りへのインタビュー

現在の日本では都市部だけではなく家族構成が変化して、単婚小家族が増加しています。そのような変化によって、世代間交流の機会が失われてしまいました。
 
自治体が行う史跡めぐりや郷土史研究家が行う文化財ウォーキングなどのイベントに参加することを、子どもたちに勧めています。フィールドワーク体験だけではなく世代間交流の体験機会となるからです。
 

 
この教材を活用することによって、高齢者世代で共有されていた土地に伝わる伝承や言い伝えを子どもたちが学習することは重要なことであると思います。
 
さまざまな出来事の記憶や背景を伝えるものとして、伝承は地域の歴史を知るための参考になります。お年寄りへのインタビューは、伝承を知るための有効な方法です。
 

同じように、古い寺社の住職や神主さんが伝承を受け継いでいることも多いので、そのような方々へのインタビューも有効です。

2.マップ検討(ルートと移動手段)

史料調査に基づいて、国土地理院の1万分の1の地図を用意して、スマホのコンパス機能を使って地図を読みながら道をたどることができればベストです。また、訪問する史跡や寺社の位置をデジタルマップで確認する方法もあります。
 
Google Mapのストリートビュー機能を利用すると、周囲の景観や状況を確認することもできます。史跡や寺社などの位置と、調べる「道」の場所を、デジタルマップに書き込みます。
 
デジタルマップを使用するのは、地点間の距離や移動時間の計算などの機能を利用するためです。
集合・解散場所(仮の場所でも可)も記入し、フィールドワーク全体の移動時間を計算します。移動時間は合計で60分程度を目安とします。
 

Google Map:移動経路と距離、時間

移動経路に山間部が含まれる場合には、特別な注意が必要です。デジタルマップでは移動距離や時間の計算ができないだけではなく、道が見つからない場合があります。国土地理院の地図を使用して、事前に下見をしておくことが必要です。
 

3.開催準備

フィールドワークでの訪問先を決定し、合理的な移動計画を作成したら開催準備を始めます。
開催日時、集合・解散場所を決定し、参加予定者の募集、配布資料の作成などの準備を進めます。
集合・解散場所は、必ず屋内にします。屋外で集合する時は、オリエンテーションを実施できる場所であることをあらかじめ確認しておきます。
 
配布資料には、以下の内容を記載しておきます。
 
・その地域の歴史的なできごと
・地域の特色
・訪問する史跡や寺院の概要
  :
これらの配布資料で、「道」が地域の中で果たした役割の理解へと発展させます。
参加者への事前通知は、ダウンロード資料を参照してください。
 

4.オリエンテーション

フィールドワークを始める前に、参加者の確認とオリエンテーションを行います。
オリエンテーションでは、フィールドワークの目的、配布資料、当日のスケジュールと注意事項について説明・確認します。
 
参加者はそれぞれ2人(もしくは3人)でペアを作ります。交通に対する配慮や、安全や行動についてお互いに注意をはらうためです。移動途中にはぐれることのないように注意します。
 
フィールドワーク終了後に、発見や気づき、疑問などの発表をペアで行うことを伝えて、参加者の注意力を高めます。
揃いのビブスや腕章があると、参加者の気分が盛り上がります。

5.フィールドワーク

フィールドワークでもっとも気を配らなければならないのは、参加者の安全です。徒歩で移動するときは列の先頭と最後尾に指導者または保護者がついて、安全監視します。指導者がひとりだけで引率するときは、移動中に参加者への注意を切らさないようにしなければなりません。
 
道端の石碑や石仏などを見学するときに安全確保が難しいと感じたら、安全な場所で説明などを行うようにします。スマホ利用の場合は特に注意が必要です。
フィールドワークの対象となる史跡や寺社については、いつからその場所にあるのかという基本情報をもとに、「道」との関係を考えてみます。
 
気づいたことや疑問などは、フィールドワーク体験シートに記入します。
 

6.発表とクロージング

集合場所に戻ったら、フィールドワーク体験シートをもとに「道」が果たした役割についてペアで検討し発表します。
発表の目的は気づきや疑問を共有することであり、感想を述べることでフィールドワークの体験を定着させることです。